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プログレってどうなの? 7 ~ ガブリエル期のジェネシスとまとめ

店長日記セレクト
サード・イアーの密かな愉しみ~プログレってどうなの? 7  

ーサイケの亜流としてのプログレの死 2~プログレの定型としてのジェネシス的情感~ガブリエル期のジェネシスとまとめー

以下、友人S、店主K。 


S「ジェネシスは好きだな」。

K「ていうよりピーター・ガブリエルじゃないの?」。

S「あぁ、そうか、そうだな。ガブリエルが好きだ」。

K「別に言い直さなくてもいいよ。で、どの辺り?」。

S「ソロならサード、でも全般にOKだな。ジェネシスなら月影の騎士とデューク・・・・あれ?」。

K「ははは、ガブリエルじゃないのも混じったね、まあいいけど」。

S「ジェネシスは、一般的にはガブリエル在籍時に人気が集中するよな。未だにジェネシス=ガブリエルのイメージが強い」。

K「そうだね、怪奇骨董音楽箱やフォックストロット、月影の騎士辺り。でも、ギターとキーボードで美しいアルペジオを重ねて分厚いアンサンブルを構成するという、いわゆるジェネシス的サウンドって、元々はアンソニー・フィリップスが編み出したものだよ」。

S「フィリップスが中心となって、マイク・ラザフォード、トニー・バンクスの3人だな」。

K「まだフィリップスがいる侵入には、その後のジェネシスの要素がほとんど顕われている。スティーヴ・ハケットの変テコなギターは除いてね」。

S「ガブリエル期のハケットのギターは、わりと装飾的だものな。イエスのウェイクマンに立ち位置が似ている・・・・」。

K「うん、楽曲に深くコミットしないという点で似てるね。トリック・オブ・ザ・テイルと静寂の嵐で主張を始めて、ソロ作品群は皮肉にも最もジェネシス的情感を継承してるけど」。

S「定型化されたジェネシス的情感の再生産なんだけど、待祭の旅からディフェクター辺りまではすごくいいな」。

K「確か、突然レコーディングに来なくなって、そのまま辞めたんだよね」。

S「キム・プーアがそそのかしたんじゃないのか?、あなたは才能がある、ソロでやるべきよ、スリーヴは私にまかせてって」。

K「わははは、ありそうな話だね。ブルース出身なんだけど、ジェネシスでは全くブルースを使わず、クラシックや変わった音色・奏法に傾倒して、結局どれも中途半端。でもそれが味になって結果としてカッコいいという・・・・」。

S「面白いギタリストだよ、いつのまにかジェネシス的情感も身につけたしな。で、話を戻すけど、侵入は巷での人気も評価も妙に低くないか?」。

K「まあね、期待されるジェネシス的情感ってやつが薄いからじゃない?。でもとてもよいアルバムだよ、青臭いけど嘘がない。ハタチそこそこの悩める青年像がセキララに露になってる」。

S「暗くてくぐもっていて、正しくサイケだよな。しかも美しくて重厚で、何の定型にもハマっていない」。

K「そうだね。侵入の頃のジェネシスはフィリップス中心のバンドだから、怪奇骨董音楽箱以降とは違う情感なんだよね。彼のナイーヴさとか内省感、線の細さが根幹になってて、そこにカブリエルの共感もある・・・・」。

S「なるほど、それを踏み台にして、その後のジェネシス的情感がスタイル化されていったと言えるのか。でも、フィリップスはともかく神経質だったらしいな」。

K「うん、フィリップスは基本的に人前に出るのが恥ずかしくて、結局は侵入のリリース前に辞めちゃう。4年程引きこもって和声の勉強してからソロ活動を始めるんだけど、未だにライヴはほとんどやらないものね」。

S「当時のライヴでは曲ごとにチューニングして、しかも12弦だったりすると時間がかかる。それで間を持て余したガブリエルがコスプレして寸劇を始めたとか」。

K「そういう通説あるね。でも、ガブリエルのコスプレにはもっと他に理由があったんじゃないかな」。

S「ほほう、と言うと?」。

K「正確にはわからないけど、ガブリエルがコスプレや寸劇を本格的に始めたのはフィル・コリンズ加入後で、フィリップス在籍時は少なくともコスプレはほとんどやってないはずなんだよね、勿論剃り込みも。で、確かに最初のキッカケとしてはチューニングの間を繋ぐ的な側面もあったんだろうけど、何よりバンドの内側からバンドを相対化しようとしたんじゃないかな?」。

S「つまり、あのキテレツな着ぐるみやコスプレは照れ隠し的な要素があるってこと?」。

K「ある意味照れ隠しでもあるかな。コリンズが入って、バンドの演奏は飛躍的に向上してさ、楽曲も洗練されて、ジェネシスはいわゆるプログレとしてどんどんカッコよくなっていったよね」。

S「それがイヤだった、または恥ずかしかったのか」。

K「屈折してるけどね、そうだったんじゃないかな。フロントマンとしては、それに乗っかってスターになるか、キテレツなカッコしてバランスとるかの二者択一的な・・・・」。

S「絶対的存在か相対的存在かの選択」。

K「はい一派かわかりません一派かの選択でもある。あのコスプレは1人サイケだよ」。

S「なるほど、スターである自分をよしとしない、相対化しようと。で、わかりません一派でいこうとしてたのに、逆にそのコスプレもウケ出して、幻惑のブロードウェイの頃にはうっかりスターになっちゃって、気がついたらはい一派になっていた。でも、長女や不倫のこともあって脱退して、やっぱりわかりません一派に戻ろうと・・・・」。

K「その頃はバンド自体がはい一派一直線だったしね。わかりません一派に戻るなら、もう辞めるしかない」。

S「それなら、他のメンバー達がコスプレを嫌がっていたのも頷けるな。はい一派には理解不能だもな、意味不明」。

K「そんな風に流れを追っていくとさ、やっぱり73年~75年頃には、少なくともブリティッシュにおけるサイケの亜流としてのプログレは息絶えたんだよ、わかりません一派が主流だったプログレの死」。

S「それ以降は別物ということだな、はい一派が主流のプログレ・・・・」。

K「うん、それはポップスの亜流としてのプログレだよね。サイケの亜流としてのプログレとは根本的に違う」。

S「それまでのプログレの死であり、新たなプログレの誕生でもあるわけだ。狂気や危機、月影の騎士なんかがバカ売れしちゃって、プログレの定型が出来てしまったんだな」。

K「本来定型なんてない、何でもありでゴッタ煮の状態からバカ売れするモノが生まれて、それがジャンルとしての定型になる。フリップの言う魔法の扉が閉じちゃったんだよ」。

S「定型以外が淘汰されていくわけだな。多くのリスナーがその定型を求めるようになり、レコード会社もプロダクションも当然その方向になる」。

K「うん、皆で揃って保守化していった、アーティストもリスナーも含めてね。まあ、魔法の扉が開くなんてのは、ビジネス基本で考えると異常な事態でもあるわけだし、当然その反動は起きるわけで、オイル・ショックやベトナム戦争の終息とかもあって、結局普通の状態に戻っていったって感じだろうね」。

S「だから、73年~75年頃からポンプを経て現在に至るプログレの主流は、フロイド、クリムゾン、イエス、ジェネシス、ELPの5大バンド+カンタベリー辺りと言った狭い範囲のビッグ・ネームの定型に、結局は収束していきがちになってしまうと・・・・」。

K「そうね、リスナーの多数派がそれを期待する限りは、そのビッグ・ネームの本人達も含めて基本的に定型プログレの縮小再生産になっちゃう。それは、それだけ当時のビッグ・ネームが偉大だということでもあり、後の世代は勿論、本人達だって中々超えられないということでもあるよね。でも、ポップスの亜流としてのプログレにだってカッコいいものは沢山あるし、別に良し悪しの問題じゃないんだよね。かなり少数になったとは言え、わかりません一派でやろうとしてるプログレだって未だに存在してるわけだしさ」。

S「別物として両方楽しもうと、但し辛抱強く」。

K「うん、淡白にならずにね、そして幅広く」。

S「巷で評価の定まったもの以外にも・・・・」。

K「・・・・面白いものはいくらでもある」。

S「ところで、ガブリエルの新作、楽しみだな」。

K「フリップもクリムゾンを始動するらしいよ」。

S「それも楽しみだ」。

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